地域の声

子供に言われるとお母さんも
面倒くさいって
言えなくなるんです

戸倉保育所 所長
佐々木 美香さん

多くの漁村を抱える戸倉地区(旧戸倉町)の高台にある戸倉保育所では、毎日の給食の後に子供たちが残飯の分別を実施している。保育所で分別をすることで意識が変わり、父母や祖父母の仕事に興味を持つようになる子供が増えているという。保育所長の佐々木美香さんが、子供たちの変化を次のように語る。
※(本記事は2017年12月8日に発行した電子書籍「バケツ一杯からの革命」からの抜粋記事です。写真は2017年12月、いつも分別回収に協力してくれている戸倉保育所にアミタ有志一同から御礼のメダルを贈呈した際に、撮影したアミタ社員と園児との記念写真。)

3歳の子でも悩みながら、ごみを分けるようになりました。

佐々木さん:「漁師の子が多いので、さかなの骨はどっち? とか、ホタテのからはどっち? と、給食に出ないものの分別方法を保育所で先生に尋ねてくるんですよ。分別を通じて家庭の仕事や地域の産業に関心が広がっていったことが大きな成果だと思いますね。」

園児が給食後に分別する様子

園児が給食後に分別する様子

児童たちへの最初の動機付けは、やはり工藤真弓さんの紙芝居教室だ。実物の野菜くずを示しながら創作キャラクターの言葉で資源循環の意味やメタン発酵のしくみを紹介する紙芝居は年端もいかない児童らにもすぐに受け入れられ、その日の給食から分別に取り組むことができたという。

佐々木さん:「3歳の子でも悩みながら、ごみを分けるようになりました。イチゴのへたを生ごみに分けるときは自信たっぷりの笑顔になってねぇ(笑)。」

初めての分別にチャレンジする児童の様子を、相好を崩して語る佐々木さん。小さな「できた」が自信につながる原体験となり、やがては循環型社会の一員としての自覚に結び付いていくことだろう。

佐々木さん:「おうちでも台所のお母さんにへばりついて、ニンジンのへたを拾い上げて『お母さん、違うのに入れた』と訴えたりするそうです。子供に言われるとお母さんも面倒くさいって言えなくなるんですよ。」

園児たちへの紙芝居教室。未来の瞳が育まれている。語り手は工藤真弓さん

園児たちへの紙芝居教室。未来の瞳が育まれている。語り手は工藤真弓さん

繰り返しやることで、地域の習慣として定着していくと思います

保育参観の日には工藤さんが同じ主婦の目線から分別方法を母親たちに分りやすく説明し 率直な意見交換も行われるという。若いお母さんはすぐに理解して分別するようになるが、同居するおばあちゃんには「年寄りには説明しても分らないから」と諦めがちだったそうだ。

佐々木さん: 「だからおばあちゃんたちへの説明会も別に開いたんです。『おばあちゃんには無理だと言ってたけどね~』と言うと、『んなことねー、できるわ』とやる気を出してもらえましたね。」

こうした説明の機会は一回限りではなく、繰り返し実施することが必要だと佐々木所長は語る。

佐々木さん:「津波から逃げる避難訓練は毎月あります。ごみの分別回収の説明会も1年に一回ぐらいは繰り返しやることで、地域の習慣として定着していくと思いますね。」

児童から父母、そして祖父母へと分別回収の仕組みを伝えるための情報ステーションとして、地域の保育所や幼稚園が重要な役割を果たしている。


佐々木 美香

プロフィール

佐々木 美香(ささき みか)さん
南三陸町立戸倉保育所所長

南三陸町志津川出身。旧志津川町に保育士として勤務開始。
縁あって戸倉地区に嫁ぐ。震災後、登米市佐沼に移り住むも戸倉高台に再建された戸倉保育所にて所長として在籍。現在も保育所と戸倉地区の方々とのコミュニティー作りに取り組み日々、明るい笑顔とバイタリティ溢れる保育を展開している。

無料電子書籍「バケツ一杯からの革命」

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