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1. 未来のニーズを形にする会社

アミタホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 熊野英介

現在、世界は経済の大きなうねりの中で漂っています。地球環境問題や生物多様性問題という人類史上未曾有の制約条件と、際限なき物質や貨幣の所有欲求との均衡を探しながら揺れています。2008年9月に起こったリーマンショックは、一瞬にして3,200兆円もの金融資産を消滅させてしまいました。この事件は、金融資産の消滅だけでなく、近代社会において構築されてきた根本要素である「信頼」が消滅した年と言って良いと思います。「信頼」を復活するためには、人類は自ら破壊した「自然」と「社会」と「人間」との関係を修復して、未来への「セーフティーネット」を再構築することから始める必要があると思われます。欲望の大量生産に歯止めをかける時期がきました。

アミタ株式会社は、まだリサイクルという言葉が一般的でなかったころから、「資源はいずれ枯渇する」という事実を正面から見据え、「資源を創り出す」事業を手がけてきました。それが、独自の技術と海外にまで渡るネットワークをもつ地上資源事業へと結びついています。アミタグループは、常に現在のニーズだけでなく、未来の社会に確実に必要となることをどこよりも先に事業化しようと試み、技術を蓄積してきました。

今後の社会のニーズとは何なのか?を考えてみると、資源、エネルギー、食料、人間関係、未来への不安の解消等があげられると思います。資源、エネルギーや食料の供給はまだ理解できるとしても、人間関係や未来への不安の解消というニーズを事業に結びつけるにはどうすればいいのでしょうか?

2. 関係性を事業にするということ

事業を創出するということは、顧客を創り続けることを意味します。人間関係や未来への不安を解消するということは、関係性を創り続けることで安心が得られる、と証明することです。これは、「関係性の商品」を創り、顧客を創ることでもあります。

関係性の商品とは、

  1. 自然や人の役に立ちたいという利他的欲求を満足させる。
  2. 健康対策や化学物質対策等で安心を保証し、生存本能を満足させる。
  3. イニシャルコストが高くても省エネや利便性でランニングコストを低くして経済性欲求を満足させる。
  4. 生活センスや美意識などの利己的欲望を満足させる。

という四要素を取り入れた商品です。

例えばアミタグループが京丹後や那須で行なっている「森林ノ牧場」という事業があります。ここでは、人件費がかさむわりに収入が少ない林業を、森で牛を飼うことで森林施業の人的作業を減らし、同時に牛乳という新たな生産物を創り出すことで新たな事業に挑戦しています。この森林内の天然の草を食べて育った牛の牛乳は通常のものより高価格ですが、店頭ではあっという間に売り切れています。購入者は、自然の味と安心さもさることながら、この牛乳が生み出されるまでのストーリーにも共感してくれているのでしょう。この牧場の「森林ノ工房」は、理念に賛同してくださった方々が無償でお手伝いくださり、作られました。牧場では、定年退職した方やハンディキャップを持たれた方が働いてくださっており、地域での再雇用の場も生み出しています。

2009年2月2日、アミタ株式会社は企業の環境関連活動の支援や自然産業に関する調査・研究・コンサルティングを行う株式会社アミタ持続経済可能研究所、インターネットのASP機能を通して環境リスク管理サービスを行うアミタエコブレーン株式会社、そして地域における森林・林業のトータルマネジメントを行う株式会社トビムシを分社しました。
これによって、創業以来30年以上蓄積してきた環境のリスク調査・研究とそのマネジメントに関するナレッジを活用して、2つの事業分野を創出しました。ひとつはグリーンクラウドとも言うべきサービスであり、環境リスク管理の利便性向上と最適なコストパフォーマンスを同時に実現するという、産業や社会の環境化に必要な環境リスクのナレッジプラットホームを提供する事業分野です。もうひとつは、自然資本の向上を目指した地域活性モデルを構築・提供する事業分野です。

アミタグループの事業は、一つの要素のみによって成立するものではありません。アミタグループは、複数の関係性を組み合わせ、新たな形にすることで、「循環型システム」を創り出していきます。この技術の蓄積によって、新たな社会ニーズを事業としていくのです。

3. カンパニーと共に創る新しい組織

アミタグループの掲げるミッションの達成には、アミタグループの事業領域だけでは十分ではありません。日本全体の社会を変えていくためには、共に関係性を事業化することに関わってくれる仲間が必要です。アミタグループは、多くの仲間(カンパニー)と協働して、壮大な事業を実現させていく組織(カンパニー)を創り出そうとしています。

なぜ、関係性を事業化するために多くの仲間が必要なのでしょうか。現代は、衣食住に満足している約6億人の先進国とまだまだ物質的満足を追求する57億人の人口の市場に分かれています。先進国の人々は物質的に満足しても精神的に貧困化し飢餓化しています。この新しい社会的ニーズは、ものづくりの生産性を高める公式である労働力÷時間の生産性を向上しても解決できません。精神的飢餓、貧困の根本的な原因は、孤独です。孤独を解決するためには、信頼の関係性が必要になります。このような関係性づくりの生産性を上げるためには、信頼力÷知恵の公式が必要となります。

つまり、信頼の関係性を商品化するための有効な知恵を、低コスト・短時間で集め続ける必要があります。同じ方向と価値観を持った仲間が集まれば、信頼の関係性を商品化するための企画は作りやすく、商品化に向けての検証は行いやすく、成熟社会に必要な、孤独の追放をもたらす商品群は創り続けやすくなります。

このように、関係性の事業化を信頼できる仲間(カンパニー)と創りやすくするあたらしい組織を有機的カンパニーと呼んでいます。

会社を超える会社を必要とする時代になったのだと思います。

2010年1月
アミタホールディングス株式会社
  代表取締役会長兼社長
熊野英介

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