アミタの支援で千葉大学がはじめる「薬用植物」の研究とは?
2009年3月26日
本日のリリース(新しいウィンドウで開きます)にもあるように、アミタは千葉大学環境健康フィールド科学センターに機能性植物生産学寄附研究部門の設置を申し込み、2009年4月から薬用植物の生産技術についての研究が開始されます。
「薬用植物」といってもなじみがないと思いますので、今回は、薬用植物をとりまく背景や、この研究の目的などを、寄附研究部門の代表であり、環境健康フィールド科学センターの設立に深く関与された古在豊樹先生(前千葉大学学長)にお伺いしました。
(写真は薬用植物の一種である薬用デンドロビウム)
薬用植物のおかれた状況は?
世界的な環境意識・健康志向の高まりのなか、漢方薬やサプリメントの材料として、薬用植物の需要は急速に高まっています。また、米国などの先進国の多くでは、医療費高騰を軽減するために、代替医療・伝統医療や生活習慣病対策、予防医学への関心も高まっています。
日本の漢方薬原料の約90%は輸入に頼っており、輸入量の約80%は中国からです。原料の大半は、野山に自生している薬用植物を採取して得るため、需要の増加に伴い、地域によっては、薬用植物が乱獲され、枯渇しつつあります。薬効成分は植物の根に含まれる場合が多いため、ブルドーザ等による根こそぎの採取が行われ、その結果、翌年の自生植物量が激減し、さらなる原材料不足や砂漠化の一因となる、という悪循環がおきつつあります。
また、採取地が遠くに移ることによる薬効成分の変動、類似植物(ニセモノ)の流通、栽培時の農薬混入など、生産物の質を不安定にする要因が増えています。中国では、薬草植物の需要増と乱獲抑制の点などから、一部の薬用植物の輸出を制限しはじめています。
今回の研究の目的は?
薬用植物については、海外での「採取品の輸入」から、国内外での「栽培」に移行させていくことが必要と考えられます。ただし、現状では、薬用植物の栽培技術は十分に確立されていません。省資源・環境保全・省エネに配慮し、薬効成分濃度が高く、薬効成分が含まれている部位の収量が多い高効率な生産技術を開発するとともに、生産性の高い品種・系統の育成を行うことが、研究面でも、また研究成果を事業として活かすためにも求められています。
こうした栽培技術が確立されれば、大部分を輸入に頼っている生薬の自給率を高めることができ、他方では、海外の採取地の資源枯渇を防ぎ、生物多様性を保護することにもなります。さらに、薬用植物の苗や生薬の輸出、さらには薬用植物生産システムの輸出が可能になります。(写真は薬用デンドロビウムの栽培のようす)
寄付研究部門を設置する「千葉大学環境健康フィールド科学センター」はどんな機関?
「健康に生きる」をテーマに掲げ、東洋医学、環境健康科学、環境園芸学を中心にしている教育研究の場です。2003年に千葉大学の柏の葉キャンパス内に開設され、キャンパス周辺のまちづくりに参画しています。合成化学物質をできるだけ使わない実験住宅プロジェクトや、医療・食・農業を統合した研究プロジェクト、高品質な有用植物を生産するシステムの研究などが行われています。キャンパス内には漢方治療を中心とした診療所や野菜・花・果物の販売所があり、研究と実践を同時に行っています。
(詳しくは、環境健康フィールド科学センターのウェブサイト(新しいウィンドウで開きます)をご参考ください)
大学の薬学部には栽培学・品種改良学の研究室が無く、農学部には薬用植物の研究室が無いために、薬用植物の栽培や品種改良に関する研究は、発展してきませんでした。農作物や園芸作物の栽培法・品種改良と比べると、薬用植物のそれらはほとんど研究されていません。千葉大学環境健康フィールド科学センターは、環境園芸学・環境健康科学・東洋医学・薬学を統合した研究を行ってきており、薬用植物の栽培と品種改良の研究に強みを持っています。
本事業への想いと期待についてお聞かせください。
小さい頃から農業をやりたかったのです。農業に一生かかわると決めて、約50年が経ちました。農業者にはならず、研究者になりましたが、研究成果を活かして農家を支援したいと思ってきました。園芸学部で、当時マイナーだった園芸環境工学を研究対象とし、全国各地の施設園芸農家と協力して施設栽培技術の研究開発をしました。その後、かつての日本のように貧しい東南アジアの農家の支援を目的として研究を行い、海外からの研究者を多く受け入れてきました。それらの経験を通して、環境と健康の視点を農業に取り入れることの重要性を感じてきました。
今回の事業では薬用植物を切り口として、環境保全と省資源に配慮した、自然とふれあう健康な生活を次世代に提供していきたいと思います。これは、アミタが目指す社会像と重なる部分が多いと思います。そして、薬草植物を活用した新しい産業、「環境健康産業」を創出していければと思います。
(古在先生の想いや人となりについては、先生の著書『「幸せの種」はきっと見つかる』(新しいウィンドウで開きます)
(祥伝社)や『ALL YOU NEED IS GREEN コザイ教授とツギハラ社長が考える「環境と貧困」』(新しいウィンドウで開きます)
(講談社、次原悦子と共著)に凝縮されています。ぜひご覧ください)
アミタは京都府京丹後市で森林の多面的な活用を目指した「森林ノ牧場」を運営し、そこでとれたノンホモジナイズ牛乳である「森林ノ牛乳」などを商品化してきましたが、これらは環境と健康の視点を農業・林業に取り入れたものです。今回、豊富な蓄積と実績をお持ちの古在先生・千葉大学と連携することで、生活の質を重視した新しい商品の開発に取り組みたいと考えています。ぜひご期待ください。
(取材・構成 カンパニーデザイン室 渡邉文隆)
