海外からの安価な輸入食品をめぐる偽装事件や毒物混入事件が相次ぐ中、安心・安全な食への関心が高まっています。しかし、食を育む「環境の豊かさ」と「農家の暮らし」が守られなれなければ持続可能な社会を構築することはできません。
こうした課題へのひとつの答えとして、琵琶湖の北西部に位置する滋賀県高島市では「たかしま生きもの田んぼ」というプロジェクトが展開されています。
プロジェクトのコンセプトは、「農家の安心(経営の安定)」「消費者の安心(食の安全)」「生きものの安心(生物多様性)」の3つの安心を確立すること。市内から有志の農家が集まり、共に学び、試行錯誤しながら、農薬・化学肥料を一切用いず、生物多様性にも配慮した米づくりに取り組んでいます。地元を元気にしたい、自分たちにできることをやりたい、という志ある農家の方々が主役の活動です。
アミタ持続可能経済研究所はこのプロジェクトに参画し、「自慢の生きもの探し」や生物多様性保全策の提案・実践、農産物のブランド化・マーケティング支援、農家グループの組織化支援などを実施しています。
水田に農薬(とくに除草剤)をまくことで、そこを住みかとするイトミミズやミジンコなどの小さな生きものたちが激減します。それらを餌とするカエル、メダカ、ホタルなどの生きものも減少し、それらを糧とする鳥やヘビなども、続いて減少していきます。
昔あたりまえにいた生きものが、今もあたりまえのようにいる水田。それは農薬や化学肥料を可能な限り使用していない水田であることの、何よりの証となります。
トキやコウノトリなどのトップスターこそいませんが、「たかしま生きもの田んぼ」では「田んぼに暮らす生きものたちのすべてが主役」という視点に基づき、水路に魚の通り道となる魚道を設けたり、水路に落ちたカメやカエルの帰り道となる亀カエルスロープを設けたり、休耕田にビオトープを造成したりと、地域に生息する様々な生きもの大切にする工夫が多くなされています。そして、農薬や化学肥料を使わずとも高品質なお米が安定的に収穫できるように、新しい栽培技術の研鑽に取り組んでいます。決して派手な取り組みではありませんが、そこで収穫されるお米は、2007年度は年明けにはほぼ完売、2008年度も多くの注文・問い合わせが入っています。「生きものと共生する」ことを通じて発現する価値が、多くの事業者や生活者にしっかりと評価されています。


